- 調査・研究・実施報告
- 2022/05/20
地方創生をめざす自治体へ、教育×伝統芸能で次世代育成のためのコンサルティング。 兵庫県南あわじ市の挑戦。
子どもたち・教員、そして市の未来を、カリキュラムで変える。
地方創生の鍵は「人づくり」、まさに教育にあります。そう位置づけている自治体は少なくないでしょう。一方で、次世代育成のビジョンを、効果的かつ持続可能な施策に落とし込むことは、行政の性質上困難でもあります。
兵庫県南あわじ市では、地域の魅力化の一環として、市の歴史・文化的リソースである伝統芸能「人形浄瑠璃」を活用した新たな学びの仕組み作りに取り組まれました。キャリアリンクは教育コンサルタントとして、“コアカリキュラム”開発に伴走しました。
INDEX
- 地方創生のために、『教育』を変える決断をした、兵庫県南あわじ市。
- 1南あわじ市の教育に対する考えと思い
地方創生のために、『教育』を変える決断をした、兵庫県南あわじ市。
南あわじ市の教育に対する考えと思い
概要説明(約3分)
南あわじ市は、市が世界に誇る伝統芸能、淡路人形浄瑠璃を題材に、「知恵あふれ、ふるさと南あわじを大切にする人づくり」をめざした、市内の全小・中学校で実施する各学年10時間程度のカリキュラムを実施しています。
また、市として育成をめざす9年間の重点資質・能力と、その評価を実践しています。

行政のトップがどのようなステップで、何をどのように動かしたのか。『教育』を変える一つの手段として、地域に開かれた自治体オリジナルのカリキュラムの開発がなぜ必要だったのか。南あわじ市長 守本憲弘氏に、その背景と具体的なアクション、南あわじの未来を見据えた『教育』にかける思いをうかがいました。
兵庫県南あわじ市 守本 憲弘 市長インタビュー(pdf)インタビュー内容は2019年時点のものです。
- 地方創生につながるカリキュラム開発のコンセプト
- 地域の伝統芸能『淡路人形浄瑠璃』を題材とする
- 「南あわじっ子につけたい力」に基づき、重点育成
- 資質・能力を設定、義務教育年間で系統的に育む
『教育』を変える手段-地域独自の全市共通「コアカリキュラム」とは?
市内の全小・中学校で実施する、統一した「コアカリキュラム」

上記のコンセプトをもとに、どのようにカリキュラムが開発されたのか、詳細は以下PDFをご参照ください。
兵庫県南あわじ市の事例にみる自治体オリジナル『コアカリキュラム』開発プロジェクト(pdf)
本記事は、Future Forecast 14号に掲載されたものを再掲しています
「コアカリキュラム」のつくりかた
重点育成資質・能力の設定

「南あわじっ子につけたい力」として、重点を置いて育成をめざす上記のように3つの資質・能力を明確にし、義務教育の9年間の達成レベルを描きました。
コアカリキュラムの考え方、重点育成資質・能力については、以下のPDFをご覧ください。
南あわじ市のコアカリキュラムの考え方(pdf)系統的な単元配列

9年間を通して、淡路人形浄瑠璃を題材にしながら、地域の伝統芸能へ目を向け、自分なりのかかわり方を考え、行動していくよう系統的に学習を積み上げます。
コアカリキュラムの単元配列はこちらのPDFをご覧ください。
コアカリキュラム9年間(pdf)南あわじ市の先生方が自らつくるカリキュラムだからこそ、現場が変わる。
各学校から選出される教員「コアメンバー」によって推進
「コアカリキュラムプロジェクト」は、各学校から選出される教員「コアメンバー」によって推進されます。
以下の二つの役割を担い、市内のすべての学校での効果的な実施と、実態に即したカリキュラムのクオリティ担保を行います。
コアカリキュラム開発エピソード
まず、市内全小・中各学校から管理職が集まって、義務教育終了段階の中学3年生の具体的な姿を語り合いました。
そして、次代の市の教育を担う研究主任とともに、各学年でめざす子ども像を議論し、共通認識を深めていきました。
カリキュラム開発当時は、新学習指導要領の実施前。知識提供に慣れていた教員が、思考支援型の授業へとパラダイムシフトするにはどうしたらよいか。指導案の作成はとても苦労し、たくさんのしかけを組み込みました。
<コアメンバーの声>
中学3年生のゴールの姿を目の当たりにしたり、小・中の先生方で議論することがとても有意義。
学習を積み上げることの大切さを実感した。
コア研修会は、とても勉強になる。この経験や学びを学校に返すことが重要。
若い先生方はもちろん、学校全体をひっぱっていきたい。
「コアカリキュラム」だからこそ、「市の教育」が変わる!
GIGA端末の効果的な活用場面の位置づけ
2022年度は、コアカリキュラムにGIGA端末の活用を推奨する場面を位置づけるブラッシュアップを行いました。 これにより各学校で、ただGIGA端末を使うだけでなく、「効果的に活用する」学習が展開していくことが期待できます。 コアカリキュラムに位置付ければ、市内すべての学校で実施する、これが、コアカリキュラムのコアたるゆえんです。
<コアカリキュラムを授業した先生の声>
子どもたちの資質・能力を育成するために、どのような授業をすればよいのか、毎年、考える機会になっている。
コアカリキュラムのルーブリックを参考に、教科の授業でも、自分なりにルーブリックをつくって授業したい。
異動してきたばかりで、人形浄瑠璃について詳しくなかったが、共通カリキュラム・教材があって、子どもたちと一緒に学ぶことができた。
3年連続で中学1年を担当。積み上げがあると、生徒の「伝えたい」思いや課題感がすごく高まっていて、授業の導入がとても入りやすい。