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企画と学校が創る持続可能な教育パートナーシップ協育コラム

企業コラム

ESG経営におけるインクルーシブ推進
― 特別支援教育から学ぶ協働のヒント

ESGの「S」である社会的側面において、「インクルーシブ(包摂性)」は、ダイバーシティやサステナビリティと並ぶ重要なテーマです。しかし現状では、ESG・CSR部門と人事部門がそれぞれ異なる役割を担っているため、次世代育成の取組と障がい者雇用が十分に結びついていません。企業には、法定雇用率の引き上げや少子化といった社会的要請を踏まえ、CSRと人事の壁を越えてインクルーシブ経営をいかに推進するかが求められています。

目次

行政・教育・企業が連携する
循環型の仕組み

企業・学校・行政が相互に循環し支え合う“エコシステム”は、インクルーシブ経営と次世代育成をつなぐ基盤となります。

 インクルーシブと共生のエコシステム

1ESG経営に求められる「インクルーシブ」の視点

障がいの有無にかかわらず、多様な人々が互いに尊重し合い、能力を発揮できる「インクルーシブ社会」の実現は、今後のESG経営に欠かせない考え方です。障がいの有無によって分離されることなく、通常の職場環境でともに働き、それぞれの希望や適性に応じて能力を発揮できるよう、柔軟で支援体制の整った職場づくりが求められます。

インクルーシブな組織文化は、社員一人ひとりの力を引き出し、イノベーションを促進すると同時に、企業価値やブランド認知にも直結します。加えて、障がい者雇用の法定雇用率が引き上げられる中、単なる法令順守を超え、多様性を尊重する姿勢が問われています。これはサステナビリティ経営や人的資本経営の実践にもつながります。

2学校教育に見るインクルーシブのヒント

学校教育で行われる特別支援教育では、一人ひとりの個性を尊重し、最適な学びを設計する取組が積み重ねられています。この知見は、企業にとっても学ぶべき示唆を多く含んでいます。ESG経営の文脈で、次世代育成に関わるだけでなく、特別支援教育の仕組みや知見を取り入れることで、従業員の育成の場としても活用できます。多様な学びの環境を支援することは、、社員自身が多様性を理解し、共生社会の価値を体感する機会にもなるでしょう。さらに、少子化が進む中で将来の労働力を確保する観点からも、障がいの有無を超えて、多様な人材を受け入れる仕組みづくりは欠かせません。このような“教育の知見”を、企業・学校・社会が連携するインクルーシブなエコシステムとして広げていくことが重要です。

3教育、企業、自治体の最前線で生まれる実践事例

こうしたエコシステムを体現する事例として、ある自治体では、特別支援学級を対象にしたキャリア教育事業を地域共生の一環として推進しています。特に、中学校特別支援学級向けの職業体験プログラムでは、学校・企業・教育委員会が連携し、生徒に企業の仕事を体験できる機会を提供しています。保護者への認知も広がり、家庭と学校・企業をつなぐ接点となり、評価も高まっています。

参加した企業からは、障がいの有無に関わらず生徒と協働する中での新たな気づきや、「教える・教わる」関係を超えて共に学ぶ大切さを実感したという声が寄せられています。こうした取組は、キャリア教育の枠を超え、企業が共生社会の実現に貢献する実例となっています。

おわりに
インクルーシブ社会の実現に向けて、企業が学校教育の取組から学び、特別支援教育をESGと人材育成の双方に活かすことは、次世代育成と企業価値向上を同時に進める道筋です。法的対応にとどまらず、少子化という社会的背景を踏まえ、多様性を尊重する姿勢は未来の持続可能性を支える新しい基盤になります。さらに、単なる社会貢献にとどまらず、採用戦略や人的資本経営とも結び付きます。企業は将来を見据え、障がいの有無を超えて多様な人材を受け入れる仕組みづくりを推進していくことが求められます。